新しい定性調査に関する情報マガジン バックナンバー vol.68

グループインタビュールームのミラーを潰せ!

グループインタビュー専用ルームには大きなミラーが設置されているのは皆さまご存知の通りです。このミラーが消費者/生活者を深く理解するためには邪魔だと言われたらどう思いますか。

 

消費者調査の最先端を行くP&G社、また近年デザイン思考で注目を浴びているIDEO社。これらの企業には従来のグループインタビューには満足できず、グループインタビューを変革しようとチャレンジしている人々がいます。彼/彼女たちがグループインタビューを変革しようとするにあたって共通して主張していることがあります。それは

 

「グループインタビュールームのミラーを潰せ」

 

ということです。

 

今回はP&G社とIDEO社のグループインタビュー改革のチャレンジを紹介させていただきつつ、グループインタビュールームのミラーの存在について考えてみました。

 

グループインタビュールームのミラーが対象者に及ぼす影響

グループインタビュー専用会場のインタビュールームに備えられている大きなミラー。皆さまはこのミラーの存在を会場にやってきた対象者がどのように感じているのかを考えたことはありますか。グループインタビューの経験豊富な方ほどルームにはミラーがあるのがあたりまえすぎて、そのようなことはあまり考えたこともないかもしれませんが、実はこのミラーの存在がグループインタビューの参加者から実りある反応を引き出すのに障害になっているかもしれないのです。

 

注:我が国ではグループインタビュールームとモニタリングルームの間に存在する大きな鏡を単にミラーと読んだりマジックミラーと呼んだりしますが、マジックミラーだと少しエッチな雰囲気がするので(笑)、以下は海外でよく使われるワンウェイミラー(One Way Mirror)と呼ばせていただきます。

 

UXリサーチ会社を経営しているDemetrius Madrigal氏と Bryan McClain氏は「The Myth of the One-Way Mirror」という記事の中で以下のように述べています。

 

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我々は何千もの対象者をワンウェイミラーのあるグルイン会場でインタビューしてきた。そして、都度、対象者からインタビュー環境、特にルームに設置されていたミラーについてどう感じたかのフィードバックを得てきた。対象者からよく出てくるワンウェイミラーに対する反応は、大概「おっかない」、「威嚇されている感じがする」、「イライラさせられる」、「落ち着かない」といった言葉である。

 

また、ある女性対象者は

「たくさんの人が私を見つめている気がしたの。そして、そこでおびえている自分が愚か者のように感じたの」

と感想を述べた。

 

このようなフィードバックは要注意である。なぜなら彼女は自分の意見を十分に表現できなかったからである。調査対象の製品に対する率直な評価や改善して欲しい点を述べようとするよりは、間違ったことを言わず、愚か者に見られたくないようにといった保守的な態度に陥ってしまっていたのである。

 

人は見られているという意識があると普段と違う行動や発言をしてしまう。この普段と違う行動や発言は、あなたの調査ターゲットが、どのようにあなたの製品やサービスを使っていたり、あなたの製品やサービスに対してどのような態度や意見を持っていたりするかを理解するのに大きな障害となる。人は見られているという意識があるとオープンで正直に自分が思っていたり感じたりすることを語ることが難しくなるのである。

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我が国の対象者は、グル-プインタビュー会場に来て、なぜだか部屋に大きなミラーがあるのを見てどのように感じているのでしょうか。たまにそのミラーを使ってメイク直しをする対象者がいたりするので、そのような方は、その鏡がワンウェイミラーになっていて後ろに誰かがいるなどとは夢にも思っていないことでしょう。ただ、ネットで調べれば何でもわかる今の時代、多くの参加者は裏で誰かが見ていることを知っている人も少なくないかもしれません。どのくらいの参加者がミラーの後ろで誰かが見ていることを知っていたのか一度調べてみたいですね。

 

ちなみにリサーチ協会のガイドラインでは開始前に参加者に観察者がいることを対象者に伝えなければいけないことになっています。ただ、私が知る限り、それをスキップするモデレーターさんもいたりしますし、「別室で」とぼやかして「ミラーの後ろで見ている」と明確に伝えるモデレーターさんは少ないように思います。これは、参加者に見られているということを意識させないための工夫なのでしょうが、どう伝えるのが正しいのでしょうか・・・

 

続いて、P&G社とIDEO社の方のグループインタビュー改革の取り組みを紹介させていただきます。両者が共通してグループインタビュールームにおけるミラーの存在を邪魔だと考えている点が興味深いです。

 

P&G社のグループインタビュー改革の試み

まずはP&G社の主任研究員であるBeth Bruns氏へのインタビュー記事

Procter & Gamble Reveals How a New Focus Group Tactic Solved Four Flaws in Their R&D Process
(P&G社が従来のR&Dプロセスの欠陥を解決する新しいグループインタビュー法を公開する)

 

を紹介させていただきます。この記事が書かれたのは2002年とかなり前の話ですが、今読んでもとても興味深い内容でした。この当時からBruns氏は会場でのグループインタビューに問題意識を持っていたようです。

 

彼女は語ります。

 

「P&G社で新しい製品のリサーチをする際に、モデレーターを雇ってグル-プインタビュールームのミラーの後ろの暗い部屋に隠れるのは止めました。その替わりに消費者と直に向き合って、心のこもった会話をするようにしたのです。このアプローチはインベーションのサイクルを早めたいすべての社内マーケターに好評で、従来の会場で実施するグループインタビューよりもより速いタイミングでイノベーティブな新製品に繋がる消費者起点の大きなインサイトを生み出すことができました。」

 

以下にこのインタビュー記事の要旨を記載いたします。

 

まず彼女はそれまでP&Gが採用していた従来の製品開発プロセスには以下の4つの重篤な欠陥があったと語っています。

 

 

欠陥1: 消費者のためではなく、会社のための製品を生み出しがち

「P&Gは新しい技術や研究を重視する会社なのですが、そこから生まれた製品はその製品の合理性やロジックを消費者に訴えがちで、それを使った際の消費者の感情が置き去りになりがちでした。私はもっと消費者の感情に訴えることが重要だと考えていました。」

 

欠陥2: グループインタビューの結果をゆがめて受けとる人が多い

「これまで実施されてきたグループインタビューは多大なバイアスがかかっていて、その結果はゆがめられていました。ブランドマネジャーからモデレーターへのブリーフは自分たちが聞きたいことだけを聞く内容になっています。そしてモデレーターは忖度して、ブランドマネジャーが聞きたい結果を誘導する。ブランドマネジャーはそれをバックルームで聞きながらも、自分が聞きたかった答えしか耳に入れない・・・そんな、ゆがめられたリサーチが多々実施されてきたと思います。」

 

欠陥3: 会場グループインタビューはアクションプランを導かない

「会場で実施するグループインタビューの生産性はかなり低いと感じています。せっかく高い費用をかけて専用会場でグループインタビューを実施しても、会場まで観察しにくる関係者は少なく、また会場にきた関係者はM&Mを食べながらパソコンとにらめっこしながら他のことをするのに熱心で、話は半分しか聞いていません。そして、彼らはグルインが終わり次第、そのグルインから生み出されたであろうアクションプランを議論もすることなくそそくさと会場を去って行くのです。」

 

欠陥4: 画期的なアイデアがあっても開発プロセスを経てパワーを失っていく

「あるリサーチャーが画期的なアイデアを思いついても、それが技術部門に行き、その後、製造部門に行くといったプロセスを経ると、最終的には当たり障りのない平凡な商品になってしまうということが多々ありました。私は数多くのプロジェクトに関わってきましたが、多くのプロジェクトは私たちの技術を守ったり優位性をアピールしたりすることに熱心でコンシューマーの体験を変えるということには興味がなかったように思うのです。」

 

これらのP&G社におけるR&Dプロセス、およびそのバックボーンとなっていた従来のグループインタビューの欠陥をカバーするために彼女は新しいグループインタビューのアプローチを生み出しました。それは以下の4つのステップからなります。

 

 

ステップ1: 全員がひとつの部屋に集まる。

彼女は15名の消費者と15名のP&Gの様々な部署(研究開発部門、製造部門、マーケティング部門等)のメンバーをひとつの部屋に集めました。もちろん、そこには消費者とP&G社員の間を妨げるミラーはありません。とてもオープンな空間です。

 

「集められた消費者がP&Gの男性社員に向かって自分が使用している生理用品の改善して欲しいことを率直かつオープンに話す姿を目にして驚きました。消費者もこれまで参加したグループインタビューよりも楽しかったと答えていました。」

 

 

ステップ2: モデレーターの質問ではなく、対話をする。

彼女は

「私たちはインタビューフローに沿った質問の繰り返しでは新しいアイデアは見つからないと思いました。もっと消費者と自由に会話することによって新しいアイデアを見つけようと思いました。」

と語っています。

 

 

ステップ3: できる限り言葉ではなくビジュアルを利用する。

言葉は聞く人によって様々に解釈されたり、誤解されたりします。それを防ぐためにコラージュのようなテクニックを多用しました。

 

「例えばタンポンに関して従来のグループインタビューをするとニーズや重視点として「プロテクション」という言葉が飛び交います。しかしながら理想のタンポンに関してコラージュを作成してもらうと挿入感が最も重要で、プロテクションという言葉はどこかに消えてなくなってしまうのです。」

 

 

ステップ4: グループ終了後の分析に時間をかける。

「従来のグループインタビューでは95%の時間は暗いバックルームでモデレーターの連続した質問に対する答えを聞くことに時間を費やし、その後の分析に費やすのは5%の時間だけでした。しかしながら新しいアプローチでは30%の時間を消費者と対話することに費やし残り70%はチームでその対話から学んだことや今後の製品開発に役立たせるかというディスカッションに費やすことにしました。

このアプローチをはじめて、各部署の人間が自分の部署の都合だけを考えることがなくなりましたね。特に技術部門はこれまで消費者に接することがなく、自分の部署の都合だけを考える傾向が強かったのですが、このアプローチを始めてからはブランドマネジャーが技術部門に難しいリクエストをした時も、これまで無理だと突っぱねていたのが、消費者が必要としていることを理解しているので聞き入れて何とかしてくれるようになったのです。」

 

以上が、Bruns氏が行ったグループインタビュー改革の取り組みです。彼女が最も行いたかったことは、従来のグループインタビュールームでは被観察者と観察者となってしまう、消費者とP&G社員との関係性を、ミラーをぶっ壊すことによって対等な協力者という関係にし、P&G社員と消費者をもっと近づかせかったのではないでしょうか。

IDEO社のある社員によるグループインタビュー再構築のチャレンジ

続いてはIDEO社のNeil Stevensonという方が書いたグループインタビュー改革の取り組みについての記事を紹介させていただきます。

 

The Focus Group Is Dead- It’s time to smash that two-way mirror and start again
(グループインタビューは死んだ-ルームのミラーをぶっ潰して新しいスタートを切るときだ)

 

 

注1:この記事の前半にはグループインタビューの歴史についても書かれており、それも面白いのですが長くなるので後半のグループインタビューの改革についての部分をサマリーにして紹介させていただきます。

注2:この方はグルインルームのミラーをtwo-way mirrorと呼んでいますが、英語ではone-way mirrorのことを何故かtwo-way mirrorと呼ぶこともあるようで同じ意味で使っているようです。

 

この記事を書いたNeil Stevenson氏は、ある日かつてゼネラルミルズ社で働いていて最近IDEO社に転職してきたRyan氏と話をしていたそうです。Ryan氏はゼネラルミルズ社でケーキミックスのマーケティングをしており多くの時間をグループインタビュールームのミラーの後ろで過ごしてきた人物です。彼は、Neil氏がグルインの時代は終わったという主張していたところ、以下のような会話がなされたそうです。

 

Ryan
「グルインはかつてほど素晴らしいアイデアを生む手法ではないけど、消費者チェックするには未だ効果的な手法だと思うよ。エスノグラフィを実施しても数人の対象者と話をするためだけに恐ろしく時間がかかる」

 

Neil
「でもエスノグラフィで生活者のリアルライフに触れることはグループインタビューよりももっとインスピレーションを得られるんじゃないかな」

 

Ryan
「確かに。でも、エスノグラフィで得た経験やインスピレーションを、そこにいなかった人にどのように伝えるんだい?ボスには決して伝わらないよ」

 

Neil
「うーん。確かにそだね~。エスノグラフィが完璧でないことは認める。でも、今日のグルインがクソではないとも認められないな」

 

Ryan
「うーん・・・。そうだ、じゃ二人でグループインタビューを再構築してみようよ」

 

ここから二人の新しいグループインタビューへのチャレンジが始まりました。そこで生まれた彼らの新しいグループインタビューは以下の通りです。

 

 

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新しいグループインタビューにおいて私たちが最初に取り組んだことは、見知らぬ参加者が集まった際のよそよそしさを打ち破ることであった。新しいグループインタビューはとある水曜日の夜にシカゴのIDEO社の会議室で行われた(もちろんミラーのある専用会場ではない)。集まったのは3名の女性と1名の男性、そして数名のIDEOのスタッフである。

 

そこで私たちは最初の30分間をグループ(参加者とIDEOスタッフ)構築ために、アドリブ教室(improve class)の専門トレーナーを招いて即興エクササイズに費やした。参加者も最初は戦々恐々であったが、エクササイズが終わるころにはすっかり打ち解けて、皆で踊り歌った。参加者全員がひとつのグループになったと感じた。このエクササイズは一緒に参加したIDEOのメンバーにも大きな影響をもたらした。部屋の中の誰一人として「judgement role」(判断する役割)から解放されたのだ。

 

続いて行われた会話においても、この権威がないという状況を継続させたかった。そこで私たちはラウンジの座り心地の良いソファーにもたれながら

 

「私たちは今、食事の宅配やミールキットのプロジェクトを行っていて、皆さんの調理に伴う感情を理解したいと思っています。私たちは皆さまに聞きたい質問リストがあるのですが、今日はそれを私たちが次々に、順番に質問するといういつものやり方はしません。私たちがしたい質問リストをこの箱の中に入れます。皆さん順番にこの箱の中からリストをピックアップして、その質問をお互いにしてみたいと思います。」

 

最初の質問は「食事の準備において最悪になった時のことの話を聞かせてください」だった。参加者が様々なストーリーを述べる時に私はうなずきながらも決してノートを取らなかった。この会話が皆でゲームをしているような雰囲気にしたかった。そして、お互いをさらけだせるような雰囲気にしたかった。

 

私がメモを取らなくてもよかった理由がある。それは、会話が盛り上がった時点で、参加者を一人一人呼び出して、カメラの前での15分のデプスインタビューを実施したからだ。彼/彼女たちの語る言葉はもちろんだが、その姿や表情を記録に残したかったからだ。とはいえ、カメラのレンズを前にして語ることには緊張を強いることになる。そこで我々はフィルムメーカーのErrol Morrisが発明した画期的なカメラを利用することにした。我々は、彼/彼女たちがカメラに向かって、ただ、カメラを意識することなく自然に彼らのストーリーを語ってくれることを期待した。この矛盾する問題をErrolが発明したビデオカメラは解決するのだ。このカメラの正面にはインタビューアーの顔が映り、隠しレンズが対象者の表情を撮影する。あたかも、対象者はインタビューの目を見て話しているような錯角に陥るのである。

 

注:記事の中の写真を見ていただくと、このビデオカメラがどのようなものかわかるかと思います。ただ、こんなややこしいことをしなくても、弊社のオンラインデプスインタビューのシステムを使えばもっと簡単に全く同じことができるので、機会があれば教えてあげたいですね(笑)。

 

さて、このビデオインタビューは意図的にユル~く実施した。でも最初の質問はいつも同じだ。「あなたが愛する人のために料理するときのことを教えてください」

 

このインタビューでは、様々な調理に関する心が動かされるストーリーが語られた。と同時に彼らに共通する後悔が浮かび上がってきた。

 

「どうしてもっと母親や祖母に料理を習わなかったのだろう・・」

 

参加者の一人のMelanieは

「私の母は、年を取ったので、食事で親戚をもてなすことを止めてしまった。それが、我々の家族がバラバラになった始まりだと思う。」

 

涙をこらえながら語り始めた。カメラの前で、私が母や祖母から我が家のレシピを引き継がなかったことが、私のファミリーを結び付ける方法も引き継げないことになってしまったのだと思うと語った。

 

注:グループインタビュー中に参加者を個別に呼び出してビデオ撮影するというアイデアは以前の記事でも紹介させていただいておりますのでこちらもご覧ください。

 

私が、この新しいグループインタビューの話をIDEOの同僚にした際、彼らは私たちがしたことは今やっているグループインタビューと何が違うのかという疑問を呈した。

 

私の答えはこうだ。

 

「ある新製品のコンセプトを評価したりやテスト製品を試食して評価するのであれば、ミラーの後ろから観察していればよいのかもしれない。でも、グループインタビューは本来、創造性のためのツールだ。またこれからそうしたい。グループ内にある隠されたモチベーションを明らかにし新しい製品やサービスを生み出すためのインスピレーションを得る手段にしたいんだ。なので、私たちはグループインタビューを再構築したい。」

 

我々のグループインタビューを再構築の試みは始まったばかりである。私たちはこれから新しいグループインタビューから生まれたインサイトが世界を変えるような製品やサービスを生み出すことを証明しなければならない。ただ、現時点でも、我々の新しいアプローチは。質問リストを次々と投げかける現在広く行われているグループインタビューよりも人々の感情に結びつくことができているということは明らかである。

 

もちろんビジネスはデータによって意思決定がなされる。ただし、そのデータは共感と人間性によってバランスが取られなければならない。単なるデータの追及は、このパッケージは赤がよい、黒がよいといった質問だけになり、生活者との繋がりが生まれないのであることを知るべきである。

 

ある社会学者はこう述べている。「ストーリーは魂の入ったデータだ」。私たちが新しいグループインタビューから得ようとしているのはこの魂の入ったデータなのだ。我々は今後のこの手法を探求し続ける。我々は、新しい製品やサービスを使う人の心やマインドを深く理解するために。

グループインタビュールームのミラーを潰せ!

以上、P&G社とIDEO社のグループインタビュー改革の試みを紹介させていただきました。皆さまはこれらのチャレンジをどう思われましたでしょうか。

 

私は、両者のチャレンジに共通するものを感じ取りました。それは、Bruns氏もStevenson氏も従来のグループインタビューに存在する観察者と被観察者という関係性、質問する側と質問される側という関係性をぶち壊して、リサーチを実施するものが生活者、消費者にもっと近づかなければならないと考えていること。そして、そのためには現在、対象者と観察者を、大きく隔てているグループインタビュールームのワンウェイミラーをぶっ潰さなければいけないということです。

 

以前、この記事で紹介させていただいた米国で最も成功したキャンペーンと言われている「Got Milk?」キャンペーン。このキャンペーンを主導したJohn Steel氏は専用会場で実施するグループインタビューについてこのようなことを述べています。

 

「グループインタビューの対象者には、サンフランシスコ動物園のチンパンジーがアフリカの森林に住むチンパンジーを表す程度の代表性しかない。いわばほとんど代表になっていないのである。」

 

対象者をチンパンジーに例えるのは少し失礼な話かもしれませんが、この言葉は現在実施されているグループインタビューの現状を上手く言い表しているのではないでしょうか。チンパンジーの本当の姿を理解しようとしたときに、動物園の檻の外から眺めているだけでよいのでしょうか。それでチンパンジーのことがわかったつもりになっているのが現在のグループインタビューです。チンパンジーのことを理解したければ、アフリカまで行って、その生態を観察しなければ本当の姿は決してわからないのではないでしょうか。

 

ただアフリカに行くのは大変です。アフリカまで行くのはエスノグラフィということになるのでしょうが、前述の指摘にもあったようにエスノグラフィは時間が恐ろしくかかり、そこで得た結果を他の人に共有できないという難点があります。であれば、少なくとも檻の中に入って行ってチンパンジーと一緒にバナナを食べながら(?)、一緒に時間を過ごしてみるのはどうでしょうか。

 

何事においても物事を理解するためには、一歩引いて客観的にその物事を観察してみるということは重要だと思います。しかしながら、できるだけ近づいて、その対象を肌で感じること、共感することも同時に重要なのではないでしょうか。現在のグループインタビューに代表される定性調査は前者に傾きすぎているように思います。

 

消費者、生活者のことを深く理解したければもっと消費者、生活者に近づいてみるのはいかがでしょうか。そうすれば、今まで見えなかったもの、感じることができなかったことが見えたり感じたりすることができるかもしれません。そのためには・・・

 

「グループインタビュールームのミラーを潰せ」
(やらなきゃ意味ないよ)